自立生活センターとは?支援内容・相談の流れをわかりやすく解説

凸凹村管理人

障がいがあることで「当たり前の生活」が制限される現実は、今なお多く存在します。
移動、住まい、仕事、人間関係…。
それぞれの場面で「支援が必要なのに、どこに相談すればいいかわからない」という声は少なくありません。

そんなとき、頼りになる存在のひとつが「自立生活センター」です。


この記事では、自立生活センターとは何か、どんな支援を行っているのか、どのように相談すればいいのかをわかりやすく解説します。

1. 自立生活センターとは?その目的と役割

自立生活センターの定義と成り立ち

自立生活センターは、障がいのある当事者が中心となって運営する福祉団体です。
その原点は1970年代のアメリカにあり「施設ではなく地域で自分らしく暮らしたい」という当事者たちの声から生まれました。

日本では1986年に初のCILが誕生し、現在では全国各地に100カ所以上のセンターがあります

参考:全国自立生活センター協議会

「支援する人」も「される人」も、障がい当事者

自立生活センターの特徴のひとつは、スタッフの多くが障がい当事者であるということ。
これは「自分たちのことは自分たちで決める」という理念に基づいています。

“障がいがあるから助けられる存在”ではなく“経験を活かして助ける側にもなれる”という相互支援の形が、自立生活センターを特別な場にしています。

施設や入所ではなく、「地域で暮らす自由」を支援

自立生活センターは、利用者を特別な「福祉の対象」として扱うのではなく、一人ひとりの「地域での暮らし」を支える伴走者として機能しています。
介助の手配、家探し、行政との交渉など、生活のあらゆる面で「その人らしく生きる」ための支援を行っています。

参考動画:自立生活センター十彩

2. 自立生活センターで受けられる主な支援内容

ピア・カウンセリング(当事者同士の相談)

ピア・カウンセリングとは、同じような経験をした障がい当事者同士による相談支援です。
「こんなことを話してもわかってもらえない…」と感じやすい障がいの悩みに対して、共通の視点で向き合い、力になってくれます。

精神的な安心感や、自信の回復につながることも多く、「ただ話を聞いてもらえる」ことの大切さを実感できます。

参照:全国自立生活支援センター協議会 ピアカウンセリングとは

介助者の手配・自立生活のサポート

地域で暮らすには、身体介助や外出支援などの人的サポートが必要になることがあります。
自立生活センターでは、介助者(ヘルパー)とのマッチングや生活の組み立て方のアドバイスなどを通じて、「住み慣れた地域で自立した生活を送る」支援をしています。

行政サービスの申請のサポートや、ケアマネジャーとの連携も行います。

住宅探し・引っ越し支援

多くの人が悩むのが「障がい者のための住宅探し」。
「車いすでは入れない」「保証人がいない」「断られてしまった」などの壁に直面することもあります。

自立生活センターでは、地域の不動産情報をもとに、住宅探しの同行や交渉支援も行っています。自治体の住宅施策や福祉制度も含めてアドバイスを受けることができます。

就労や学校生活、制度利用の相談

「仕事がしたい」「学校に通いたい」「就労移行支援ってどこで受けられるの?」
こういったライフプランに関する相談も可能です。

自立生活センターは、制度や支援機関との「つなぎ役」として、多職種と連携しながら個別の相談に対応してくれます。

3. 実際の相談の流れ:利用のステップ

まずは電話やメールで問い合わせ

ほとんどの自立生活センターでは、相談は無料・予約制です。
まずは電話やメールで「こういうことで困っている」と伝えましょう。
最初の一歩に勇気が必要ですが、スタッフの多くは同じような経験を持っています。構えず、素直な気持ちで連絡してみてください。

面談やヒアリング|悩みをじっくり聴いてもらう

初回相談では、スタッフとの面談が行われます。

  • どんな支援を希望しているか
  • 日常生活で何が困っているか
  • 自分の希望や夢は何か

こうした話をゆっくり聴きながら本人の気持ちを尊重した支援計画を一緒に考えていきます。

必要に応じて福祉制度の紹介や同行支援

本人の希望に応じて、役所への同行や支援制度の紹介、他の専門機関への橋渡しなどを行います。
「何が使えるのかわからない」という方にとって、自立生活センター“福祉のパイプ役”のような存在になってくれます。

4. 自立生活センターを利用するメリット

「自分の言葉」で話せる安心感

一般の相談機関では「専門用語が多い」「こちらの気持ちが伝わらない」といったもどかしさがあります。
しかし自立生活センターでは、当事者の立場に立った支援がベースなので、安心して話すことができます。

制度や支援の“使い方”を教えてくれる

「この制度がある」だけでなく「どう使えば自分の生活がラクになるか」を一緒に考えてくれるのが自立生活センターの強みです。
“制度の説明”ではなく、“人生のデザイン”を一緒に考えてくれる場所、それが自立生活センターです。

社会とのつながりができる

自立生活センターでは、サロン・交流イベント・講座なども開催しており、「孤立しがちな生活」に居場所とつながりを生み出してくれます。
一人で悩まずに、他者との出会いの中で「こんなふうに生きられるんだ」と感じられるきっかけになるかもしれません。

5. 実際の取り組みと当事者の声

実例:重度障がい者が一人暮らしを実現

ある地方都市の自立生活センターでは、呼吸器を使用している方が自宅での一人暮らしを実現しました。
自立生活センターが介助体制の構築、福祉制度との調整、行政交渉を支援し、地域での生活が現実のものとなった事例です。

利用者の声「初めて“わかってもらえた”と感じた」

「役所では“できません”と言われたけれど、自立生活センターでは“どうすればできるか”を一緒に考えてくれた」(30代、男性)

「同じ障がいがある人と話して、自分の感じていることはおかしくないと思えた」(20代、女性)

といった声が多く寄せられています。

6. どこにある?どう探す?

自立生活センター協議会の一覧

全国の自立生活センターは、公式サイトから調べることができ、地域別の一覧と連絡先が掲載されています。

全国の自立生活センター一覧(全国自立生活センター協議会)

市町村の障がい福祉課・相談支援事業所に尋ねてもOK

地域によっては、行政や相談支援事業所から自立生活センターを紹介してもらえることもあります。
怖がらず「自立生活センターって近くにありますか?」と聞いてみましょう。

7. どんな人が利用できる?費用は?よくある疑問

どんな障がいの人でも対象?

身体障がい、知的障がい、精神障がい、難病など、障がいの種類を問わず相談可能です。
ただし、センターごとに専門領域に差があるため、事前に内容を確認しましょう。

利用料金はかかる?

相談自体は基本無料のところが多いです。

同行支援や出張には費用がかかる場合もありますが、その都度説明があります。

家族や支援者も相談できる?

はい。

本人が動けない場合でも、家族や支援者が代理で相談することができます。

まとめ:「一人で頑張らなくていい」を伝える場として

「誰にも頼れない」
「どこに相談してもダメだった」

そんな経験をしたことがある方こそ、自立生活センターに一度話してみてほしいと思います。

支援とは、「手を出すこと」ではなく「手を離さずに見守ること」。
自立生活センターは、その想いを形にしている場所です。