聴覚障がい者が能登半島地震で直面する壁 どのように向き合うのか

凸凹村管理人

地震や津波などの災害が発生すると、聴覚障がい者は避難情報にアクセスすることが難しく、命の危険にさらされます。さらに、避難所での生活も困難で、水や食料の配布、入浴時間の案内などが聞き取れないという苦労があります。

孤立という問題

今回の地震で浮かび上がったのは、孤立という問題です。避難所で他の人とのコミュニケーションが取れないことで、一日中誰とも話すことができない状況になるのです。このような課題にどのように対処するか、石川県聴覚障がい者協会の業務執行理事であり、石川県聴覚障がい者センター施設長を務める藤平淳一さんに話を聞きました。

情報の混乱

地震が発生した元日の夕方4時10分、藤平さんは金沢市内にいました。金沢での揺れは5強で、直ちにテレビをつけて奥能登での地震を確認しました。しかし、情報が混乱しており、聴覚障がいの仲間たちの安全を心配しました。

そこで、石川県手話通訳制度を確立する推進委員会のメンバーと連絡を取り、石川県聴覚障がい者センターに集まり、石川県聴覚障がい者災害救援対策本部を立ち上げました。本部長は吉岡真人さんで、藤平さんは副本部長を務めました。

最初に取り組んだのは安否確認

最初に取り組んだのは安否確認でした。石川県手話通訳制度を確立する推進委員会は、昨年夏にこのような状況に備えて防災マニュアルを作成していました。

このマニュアルは、聴覚障がいの当事者だけでなく、手話サークルのメンバーや通訳者、要約筆記者なども含めた安否確認の手順を定めています。しかし、今回の地震ではすぐに全員の安否確認を完了することはできませんでした。

多くの人々が自宅にとどまる状況

地震の規模が大きく、多くの人々が自宅にとどまる状況でした。そんな中、就労支援事業所「やなぎだハウス」の職員が中心になり、LINEやメールで安否確認を行い、わからない場合は自宅や近隣の避難所に探しに行って確認しました。それでも分からない場合は、自治体に確認を依頼しました。

金沢より南の地域では1日で確認ができましたが、被害が大きかった能登半島では1週間かかり、石川県聴覚障がい者協会の会員や「やなぎだハウス」利用者など約50人の無事を確認できました。

高齢者の連絡手段

高齢者の多い地域では、スマートフォンを使っていない人が多く、持っていても家に置いたまま避難所に行った人もいました。彼らは普段はスマホを持ち歩かず、連絡が必要な時だけメールを送受信するために使っています。さらに、地震後は通信障がいも起き、連絡がつながりにくくなっていました。

奥能登に住む手話通訳者の中には、家が倒壊したり、集落が孤立したりして身動きが取れない人や、電波が届かず安否が確認できない人もいました。

安否確認の対象

安否確認の対象は、協会傘下の9団体の会員だけでなく、難聴者生活訓練事業に参加していたきこえにくい人や、知的障がいや精神障がいのある人たちも含まれていました。

地震後、避難して生き延びた人々にとっても、生活はますます困難なものとなりました。特に奥能登地域では、聴覚障がい者が点在しているにもかかわらず、避難所では自分だけが孤立して情報が得られない状況が顕著でした。

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