障がい者を雇用すると企業の業績が伸びる?中小企業の障がい者雇用率向上に向けた取り組みとその効果

凸凹村管理人

障がい者の雇用率が上昇している現在、中小企業はどのようにして業績を維持しているのか、という疑問が浮かびます。法定雇用率の引き上げに伴い、多くの企業が達成困難な状況に直面しています。従来の2.3%から2.5%への変更が行われ、2026年度にはさらに2.7%に引き上げられる予定です。

しかし、実際の達成率は約50%にとどまっており、満たせない場合には罰金や行政指導などのペナルティーが科されます。この課題に対し、中小企業はどのように取り組んでいるのでしょうか。影山摩子弥・横浜市立大学教授によると、障がいのある労働者を積極的に雇用することで、企業は多様な人材の力を活かし、新たな市場や顧客層を開拓することができると指摘されています。

業務パフォーマンスを向上させるメリット

障がい者を雇用することで、企業は健常者の業務パフォーマンスを向上させるメリットを享受することができます。統計学の手法で分析した結果、障がい者の雇用が業績に好影響をもたらすことが明らかになっています。業界によってその影響の程度は異なりますが、一般的に数字が伸びる傾向にあります。

ただし、雇用するだけではなく、健常者の社員が障がいを持つ社員と深く接することが重要です。日常的な作業や打ち合わせを共に行うことで、相互理解が深まり、協力関係が築かれます。

特に中小企業では、障がい者との接触が密になるため、目に見える成果を上げやすい傾向があります。人数が少ない分、1人あたりの関わりが強くなります。また、経営の体力が限られている中小企業では、障がい者も戦力として活かさなければなりません。そのため、会社全体でのサポート体制が高まりやすいのです。

全体の業績が上がる理由

健常者の社員が障がい者と接触することで、全体の業績が上がる理由はいくつかあります。まず、健常者の生産性が向上します。例えば、知的障がいの人に対しては、指示書を渡しても複雑な内容が理解されないことがあります。そのため、健常者は簡潔に教えたり、作業工程をわかりやすく組み直したりする必要があります。これにより、業務が効率化され、健常者のミスも減少します。

チーム全体の結束が強まり協力体制が構築

また、人間関係も改善されます。障がい者が職場に入ることで、健常者は自身の立場を再確認し、共通の認識を持つようになります。これにより、チーム全体の結束が強まり、協力体制が構築されます。

さらに、倫理観が高まります。健常者は障がい者に対して何かサポートできないか考えるようになります。障がい者の中には、複数の指示を受けるとパニックに陥る場合もありますが、健常者同士で情報を共有し、支援することで業務の円滑な進行を図ります。

これらの効果により、協力体制が構築され、コミュニケーションが活性化します。相互理解が深まり、心理的安全性が高まることで、業務パフォーマンスの向上につながります。これらの効果は統計的にも裏付けられています。

単なる「社会貢献や慈善事業」と見なす企業

障がい者の雇用を単なる「社会貢献や慈善事業」と見なす企業が少なくないのは事実です。特に大企業では、社員数が多く、障がい者との関係が薄いため、その利点を感じにくい傾向があります。

大企業はしばしば、健常者の中から優秀な人材を採用し、障がい者を「足手まとい」とみなす傾向があります。また、障がい者を組織に溶け込ませる方法についてのノウハウも不足しています。そのため、多くの場合、特例子会社を活用して、義務を果たすだけで満足してしまうことがあります。

しかしこのような現状は非常にもったいないと感じます。大企業は多くの資源を投入しているにもかかわらず、十分な経営戦略を立てていないと言えます。

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