障がいを持つ娘のために喫茶店を始める 親子でケーキ作り、接客に奮闘

凸凹村管理人

多摩市から檜原村の小さな集落へ移り住んだ仲田美治さん(67)が、今年1月に喫茶店「茶房へんぼり」をオープンしました。長女の真由美さん(36)が聴覚障がいを持つため、家族全員での移住でした。仲田さんは、「障がいを持っていても、チャンスを生かせる場所を作りたい」と語っています。

内は畳敷きの座敷でレトロな雰囲気

店はJR武蔵五日市駅からバスで50分ほどの山あいにあり、空き家を改装しています。店内は畳敷きの座敷で、レトロな雰囲気が漂っています。

開店前、仲田さんは家族に向かって、「たくさん笑顔でお迎えしよう」と話していました。そして午前10時にオープンすると、男女3人の客が訪れました。笑顔で迎えた真由美さんに、客たちはメニュー表で指さし注文しました。彼らはケーキを楽しみ、仲田さんとの会話を楽しみながら、思い思いの時間を過ごしていました。

コロナ禍により失職

仲田さんは1979年に京王電鉄に入社し、広報などを経て、御岳登山鉄道(青梅市)の社長になりました。2018年に退職し、その後4年間は同社の相談役を務めました。

彼の長女である真由美さんは、ろう学校を卒業後、パンの製造会社で働いていました。しかし、コロナ禍により出荷先のレストランやホテルが休業し、職場の業績が悪化したため、2020年頃に失職しました。

「娘が働ける場所を自分でつくろう」

仲田さんは、「娘は再就職をしようにも、聴覚障がいという理由だけで門前払いされた」と振り返ります。真由美さんは、新しい職場が見つからず、家にこもりがちになってしまいました。

「娘が働ける場所を自分でつくろう」という思いで、仲田さんは決意しました。真由美さんは手先が器用で、ケーキ作りが得意でした。仲田さんは趣味でコーヒーを淹れることも好きで、「この二つを組み合わせるなら、喫茶店がいいんじゃないか」と思いつきました。

2021年から物件探しを始め、御岳登山鉄道時代に交流のあった人たちから建物の紹介を受けました。「水がおいしく、これなら良いコーヒーが淹れられる」と思い、周囲の自然も豊かな檜原村への移住を決めました。

「茶房へんぼり」がオープン

様々な準備を終え、今年1月28日に茶房へんぼりがオープンしました。仲田さんは「娘が1人で店の運営をできるように」と、ケーキ作りだけでなく、接客も真由美さんに任せています。

聴覚障がい者が接客していることを客に理解してもらうために、メニューに「聴覚障がいを持つスタッフが接客をすることがあります」と記載したり、真由美さんのエプロンに聴覚障がいを知らせる缶バッジを付けたりしています。

「移住してきて本当に良かった」

店は近所の人や登山者たちの憩いの場所にもなっています。人気メニューは、ドリンクと旬の食材を取り入れた真由美さんの作るケーキがセットとなった「ケーキセット」(900~1000円)です。真由美さんは「お客様が『おいしかったよ』『ありがとう』と手話で伝えてくれることもあって本当にうれしい」と笑顔を見せています。

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