近年、社会は急速な変化を遂げており、その中でも特に少子高齢化がもたらす影響と、それに対するICTの役割が焦点となっています。
高齢者や障がい者を含めた多様な社会的ニーズに対応するためには、包摂的なアプローチと最新の技術の活用が不可欠です。本稿では、『厚生労働白書』や研究プロジェクトの報告書を通じて、障がい者を取り巻く社会の変化を俯瞰し、これからの方向性について探求していきます。
障がい者の共生社会への取り組み
社会の変化に対する対応として、障がい者の共生社会への取り組みが重要です。特に、少子高齢化がもたらす影響と、それに対するICTの役割が焦点となります。『厚生労働白書』などを参考に、障がい者を取り巻く社会の変化を俯瞰し、今後の方向性についての研究プロジェクトの報告書も概説します。この学びは知識だけではなく、一緒に考える姿勢が重要です。
2011年版の『厚生労働白書』では、少子高齢化や経済のグローバル化、デフレの進行といった社会変化の現状と課題について概観しています。また、2015年版では、人口減少社会を考える特集が組まれ、障がい者施策の節目もまとめられています。2012年に成立し、2013年から施行された障がい者総合支援法など、地域社会における共生の実現に向けた法整備が進んでいます。
「2040年の社会保障のあり方を検討する」
2017年版の『厚生労働白書』では、「社会保障と経済成長」が特集され、2018年版では「障がいや病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」が続きます。そして、2019年11月には森田朗津田塾大学総合政策学部教授らによる研究プロジェクトの報告書が、「2040年の社会保障のあり方を検討する」として、21世紀政策研究所から発表されました。これらの白書や研究報告書を参考にしつつ、障がい者を取り巻く社会の変化と今後の対応について、より広範囲に検討していきます。
少子高齢化の問題
少子高齢化の問題は、将来的に深刻化する可能性があります。人口減少がその中でも大きな懸念材料です。高齢者が増える一方で、少子化が進むことで、国全体の人口が減少していくからです。
2018年、日本の総人口は1億2,644万人です。年齢層別に見ると、0歳から14歳までの年少人口が約1,542万人、生産年齢人口である15歳から64歳までが約7,545万人、65歳以上の高齢者人口が3,558万人となっています。
この構成からも、高齢者の割合が増えていることがわかります。一方で、『厚生労働白書』によると、障がい者の総数は推計で963.5万人で、人口の約7.6%に相当します。そのうち、身体障がい者が436万人、知的障がい者が108.2万人、精神障がい者が419.3万人となっています。そして、ほとんどの障がい者が在宅で生活しています。
「合計特殊出生率」
人口の減少に関して、2017年の出生数は94万6,065人で、前年と比べて減少しています。この数字は、1899年の統計開始以来初めて100万人を割ったことを示しており、国や自治体の行政関係者に大きな衝撃を与えました。
2019年には、出生数がさらに減少し、86万4千人となり、前年比で5.92%も減少しました。このような減少傾向は、合計特殊出生率が1.43という低水準で続いており、少子化の深刻さを示しています。
「合計特殊出生率」には、実際の出生状況を反映する「期間合計特殊出生率」と「コーホート合計特殊出生率」という2つの概念があります。まず、「期間合計特殊出生率」は、ある1年間の出生状況における各年齢(15~49歳)の女性の出生率を合計したものです。
これは、特定の年齢の女性が一生の間に産む子供の数を予測するのではなく、ある時点での出生率を統計的に集計したものです。一方、「コーホート合計特殊出生率」は、ある世代の女性が、それぞれの年齢で産んだ子供の数を過去から積み上げたものです。つまり、特定の世代の女性が産んだ子供の数を合計したもので、その世代の出生状況を反映します。
しかし、各世代の結婚や出産の時期の違いなどから、各年齢の出生率が異なるため、期間合計特殊出生率とコーホート合計特殊出生率の値は異なる場合があります。