はじめに:恋する気持ちに「資格」なんてない
障がいを持つ私にとって、恋愛はずっと遠い存在でした。
誰かを好きになっても「こんな自分でいいのか」「相手にとって迷惑ではないか」と、心の奥でブレーキがかかってしまうのです。
でもある日、自分の感情を否定し続けることに、そろそろ疲れていることに気づきました。
“誰かを想う気持ち”は、誰にでも平等にあるもの。
それを否定する必要なんて、本当はどこにもなかったんです。
恋に臆病だった理由

義手であることへの「引け目」
義手という身体的特徴があることで、私は人前に立つことや、自分を出すことに強い不安を感じていました。
義手が見えないように袖を伸ばしたり、写真ではいつも手を隠したり。
「相手がどう思うか」が先に来て、自分がどうありたいかなんて考えられなかった。
恋愛となれば、もっと深く自分をさらけ出す必要があります。
触れ合う距離が近づくぶん、相手の視線や反応に敏感になり「受け入れてもらえなかったらどうしよう」という恐れが強くなる。
この“恐れ”こそが、恋に踏み出すのをためらわせる最大の要因でした。
「普通じゃない」自分を受け入れきれなかった
義手であることを“普通じゃない”と感じるのは社会からの視線だけでなく、自分自身の思い込みによるものでもありました。
「自分なんて…」という気持ちが心の底にあって、何をしても自信が持てない。
他人と比べてしまい、自分に足りないものばかりを見ていました。
それに「障がいを理由に相手を困らせたくない」と考えて、恋愛を避ける“いい理由”にしていた部分もあったと思います。
でも本当は――傷つくのが怖かっただけなんです。
断られるのが、嫌われるのが、見捨てられるのが怖かった。
だから私は、恋に臆病だったんです。
変わるきっかけは、小さな会話から

「あなたのままでいいよ」のひと言
変化のきっかけは、本当に小さなことでした。
ある日、仲のいい友人にふと打ち明けた「恋愛なんて自分には無理だよね」という言葉。
そのとき彼女は、驚くほど自然なトーンで「え、○○ちゃんは○○ちゃんのままでいいじゃん」と言ってくれたんです。
その一言が、じんわり心に染みて涙が出そうになったのを覚えています。
私はずっと、自分の“足りなさ”や“違い”ばかりを気にしていたけど、友人の目には、ありのままの私がすでに“そのままでいい”存在だったんです。
その優しい肯定が、私の中の「恋してもいいのかも」という小さな希望の芽を育ててくれました。
自分を大切にする=恋をしてもいいと思えること
自分にやさしくなることは、恋に前向きになることと深くつながっています。
「どうせダメだ」と決めつける代わりに「もしかしたら、うまくいくかも」と思えるようになること。
そして「相手が自分をどう思うか」ではなく、「自分が誰を好きか」を大切にすること。
恋愛は誰かからの承認ではなく、自分の内側から始まるもの。
だからこそ、まずは自分自身を大事にできるようになることが、恋をする勇気につながるのです。
恋愛に臆病なあなたへ伝えたいこと

恋愛は「できる・できない」じゃなく「してもいい」もの
「障がいがあるから恋愛は難しい」と思ってしまうのは、たぶん、正しさや成功を重視しすぎているから。
でも恋愛って“正しい”か“間違っている”かではなく、“したいかどうか”がすべてなんですよね。
誰かを好きになるのに、スキルも条件もいりません。
あなたの気持ちが、あなたの恋をスタートさせるエンジンになります。
障がいがあっても、傷つきやすくても、恋していいんです。
むしろ、そういう人のほうが相手に優しくなれる気がしませんか?
自分の「好き」を認める勇気
誰かを好きになるって、とても勇気がいります。
特に障がいという“見えやすい壁”があると、自分の気持ちをまっすぐに伝えることが難しく感じるかもしれません。
でもね、自分の「好き」を自分で否定しないでほしいんです。
まずは心の中で「この人が好き」とそっと言ってみる。
それだけでも、心は少しずつ変わっていきます。
傷ついたときの心のケア
恋がうまくいかなくても、自分を責めない
恋をしても、うまくいくとは限りません。
伝えた気持ちが受け止めてもらえなかったり、相手の反応が思っていたものと違ったりすることもあるでしょう。
そんなとき、障がいがある自分を責めてしまう人も多いかもしれません。
「やっぱり無理だったんだ」とか「自分なんかが恋してよかったのかな」と、また心のブレーキがかかってしまう。
でも、恋がうまくいかなかったのは、あなたが障がいを持っているからじゃない。
どんな人にも、恋の行方はわからないし、結果だけがすべてではありません。
その気持ちを持てたこと、伝えようとしたこと、それ自体があなたの強さであり、やさしさです。
落ち込んだら、信頼できる人に話そう
恋愛に限らず、心がつらいときは信頼できる人に話してみてください。
うまく言葉にできなくても大丈夫。
あなたの気持ちに寄り添ってくれる人は、きっとどこかにいます。
「どうだった?」と聞かれたら「ちょっと頑張ってみたよ」と答えられるだけでも、それは立派な一歩です。
心をほぐすのは、ひとりで頑張るより誰かと分け合った方が早いときもあります。
恋愛だけがすべてじゃない。でも…

「恋しなきゃ」はプレッシャーじゃない
恋愛に臆病な人ほど、「恋愛しなきゃ」というプレッシャーを感じがちです。
でも、誰かを好きになることや、恋をしていることだけが幸せではありません。
ひとりの時間を楽しんだり、好きな趣味に打ち込んだり、人との関係に温かさを感じられることも、立派な“愛”の形です。
恋愛は、人生を彩るスパイスのようなもので、なければダメというものではありません。
ただ、「恋をしてみたい」と心がつぶやいたときには、それに耳を傾けてあげてほしい。
その気持ちを無視しないことが、あなたらしさを大切にする第一歩になります。
最後に:あなたの「好き」は自由ですてきなもの
障がいがあると「できないこと」や「足りないもの」にばかり目がいってしまいます。
でも、恋する気持ちに関しては、誰もが平等です。
どんな体でも、どんな背景があっても、誰かを大切に想うことができる心は決して“劣って”なんかいません。
「好きって言っていいのかな」
もしあなたがそう思っているなら、私はこう答えたいです。
「もちろん。言っていいし、言ってほしい」
恋するあなたは、やさしくて、素直で、とても素敵な人です。
だから、あなたの“好き”を大切にしてあげてくださいね。