目が見えなくてもスマホを使えるように 障がい者サポートセンター開設

凸凹村管理人

山口県内では、障がい者向けのスマートフォンやその他のICT(情報通信技術)機器の活用支援が始まっています。県は2023年に、利活用拡大を目的として「障がい者ICTサポートセンター」を山口市と下関市に開設しました。しかし、開設と同時に、サポートする人材の不足など、さまざまな課題が浮き彫りになっています。

iPhoneの画面読み上げ機能「ボイスオーバー」

2月6日、下関市関西町の県盲人福祉協会では、スマートフォン講座が開催されました。この講座は、視覚に障がいのある方々がスマートフォンを使いこなせるように企画されたもので、全盲や弱視などの障がいを持つ約20人が参加しました。

スマートフォンには通常の携帯電話とは異なり、物理的なボタンがないため、基本的に音声を頼りに操作する必要があります。この講座では、iPhoneの画面読み上げ機能である「ボイスオーバー」が使われました。

ボイスオーバーを使うことで、指一本から数本で画面をスライドしたり、タップしたりすることで、アプリ名や入力項目、文章などが読み上げられます。

丁寧に指導

この日の講座では、電話帳の登録が行われました。参加者の一人は、名前の登録で「姓」と「名」を分けて登録するのに苦戦していました。講師である木村恭子さん(71歳)は、一人一人の様子を見ながら丁寧に指導しました。「タップすれば名前を入力する項目が出てきます」という木村さんの声が、参加者たちに安心感を与えました。

「挑戦しなければ何も変わりません」

市内の田中宏さん(64歳)は、10年前に病気で全盲になりましたが、1年前からスマートフォン講座に通っています。「スマートフォンはまだ慣れないし、使いにくいですが、取り残されないためにも使えるようになりたいと思っています。挑戦しなければ、何も変わりません」と、田中さんは前向きな姿勢を示しています。

他市の視覚障がい者からも参加したいという要望

スマホ講座は、NPO法人「下関市視覚障がい者福祉会」が主催し、2010年4月から本格的に開始され、現在は月2回のペースで開催されています。他市の視覚障がい者からも参加したいという要望があり、2023年度には山口市や周南市、宇部市などでも出張教室として開催されました。講師の木村さんや副講師がその都度、会場に出向いて指導を行っています。

「できるようになりたい人の背中を押したい」

30年以上にわたり、点訳のボランティアなどを続けてきた木村さんは、独学でボイスオーバーを学びました。「視覚に障がいを持っていても、自分一人でスマホを使い、オンライン手続きなどができるようになりたい人もいます。そういった方々を支援することで、彼らの背中を押したい」と木村さんは述べています。

全国34都道府県に設置

ICTサポートセンターは、厚生労働省が2019年度から推進している取り組みで、2023年時点で全国34都道府県に設置され、社会全体での取り組みが進んでいます。

県内には、2カ所のサポートセンターが開設されています。下関市にある県盲人福祉協会は視覚障がい者を対象とし、山口市にある県障がい者社会参加推進センターはその他の障がい者を対象としています。どちらのセンターも、電話やメール、対面などで相談に応じています。また、4月からは県盲人福祉協会がスマホ講座を主催し、岩国市や萩市でも開催する予定です。

関連記事