最近、障がい者に対する配慮に関する問題がメディアやSNSで頻繁に取り上げられる中、先週、また新たな議論が巻き起こりました。
SNS上で話題となっているのは、車いすユーザーの女性が映画館で車いすを担ぎ上げる必要がある席での利用を断られたことです。この件について、桜美林大学の西山守准教授は、「トラブルが起きるたびに障害者への対応や、障害者側の態度に対する賛否がSNS上で巻き起こる。だが、重要な視点が抜け落ちているのではないか」と指摘しています。
様々な声があった
車いすを利用するインフルエンサーが、都内の映画館「イオンシネマ」で映画を鑑賞中、スタッフから他の劇場へ行くことを勧められたという出来事をSNS上に投稿しました。これに対し、映画館の運営会社であるイオンエンターテイメント社は、「弊社従業員による不適切な対応に関するお詫び」とする謝罪文書を発表しました。
この一連の出来事に対し、ネット上ではさまざまな意見が交錯しました。映画館側を擁護する立場からは、「通常業務以上の対応は求められない」「障がい者であるからといって特別扱いすべきではない」との声が挙がりました。
一方で、中嶋さんを支持する声としては、「映画館側の対応が適切ではなかった」「障がい者が日常的に抱える困難や苦労を考慮すべきだ」「支援体制の充実が求められる」といった意見が目立ちました。
「どちらが正しい/間違っている」だけで終わってはいけない
著者の西山さんは、企業のリスク対応や炎上対策に関わる経験から、「トラブルは当事者間で解決するのが基本で、SNSや動画共有サイトで発信することは好ましくない」という立場を取っています。
しかし、障がい者のインフルエンサーの中には、「自身の体験を積極的に発信することで、社会を変えていきたい」と考える人もいます。これが正当な主張と受け止められる一方で、不当なクレームと見なされることもあります。その結果、論争が生じることもあります。
障がい者に関連した“炎上事件”は、断続的に発生しています。そして、炎上が起きるたびに、障がい者への対応や、障がい者側の態度についての議論が巻き起こります。
今回のようなケースを議論する際には、「どちらが正しい/間違っている」という視点だけでなく、その背景にある人々の意識や社会制度の問題も考慮し、双方が納得できる解決策を模索することが肝要です。
障がい者に関する出来事がどのように受け止められているか
障がい者に関するさまざまな出来事が日本社会でどのように受け止められ、議論の的となっているかを示しています。健常者からの態度や発言が問題視される事例と、障がい者自身の行動が問題視される事例の両方が含まれています。
特に、2023年以降の出来事が増えています。コロナ禍において外出が制限され、問題が顕在化しにくかった可能性があります。また、障がい者自身が積極的に発信し、インフルエンサーとして注目を集めるようになったことも、議論の増加に影響しているようです。
このような変化が、社会通念や制度に対する違和感を引き起こし、紛争や議論を生み出しているというのは興味深い指摘です。社会が急速に変化する中で、受容し難い部分もあることを理解し、双方の立場を尊重しつつ、より包括的な解決策を模索することが重要です。
さまざまな課題が残されている
「ダイバーシティ」と「インクルージョン」の理念が社会に浸透しつつある一方で、その実現にはさまざまな課題が残されています。ジェンダーや人種の問題と同様に、障がい者に関する議論も人的負担や費用的な負担の問題が絡み合い、過熱化しやすい傾向があります。
また、「弱者は弱者らしく振る舞うべきだ」という潜在的な意識が依然として根強く残っており、障がい者が自らの権利を主張することに対して、拒絶感を示す人も少なからず存在します。
このような状況が、社会的弱者の支援に関して「支援しているからおとなしくしているべきだ」といった意識を生み出してしまうこともあります。
しかし、社会の多様性を認め、すべての人が尊重される社会を実現するためには、このような偏見や固定観念に立ち向かう必要があります。個々の人々が相互に理解し合い、協力し合うことで、障がい者も含めた全ての人々が自由に生きることができる社会を築いていくことが求められています。
本質的な問題解決がおろそかになり議論が混乱しやすくなる
バニラ・エアの搭乗拒否事件は、障がい者が航空機に搭乗する際に起きた問題であり、今回のイオンシネマの問題と類似しています。両事件とも、障がい者が自らの権利を主張する中で、社会的な問題が露呈しました。この事件から示唆される点はいくつかあります。
まず、航空会社や他の関係者は、障がい者が安全に搭乗できるように十分な配慮を行う必要があります。木島さんのような車いすユーザーにとって、搭乗は日常的な活動ではありません。そのため、航空会社は特別な配慮と柔軟な対応が求められます。
また、報道やSNSなどを通じて広く知られると、議論が本質から逸れることがあります。事件が報道された後、バニラ・エアの対応に対する批判だけでなく、木島さん個人に対する攻撃も行われました。このような場合、本質的な問題解決がおろそかにされ、議論が混乱しやすくなります。
最後に、障がい者が自らの権利を主張する際には、社会的な偏見や先入観による批判を受けることがあることを考慮する必要があります。木島さんは「クレーマー」や「プロ障がい者」と呼ばれ、激しい非難を浴びました。このような攻撃に対しても、社会全体が理解と支援を示すことが重要です。
バニラ・エアの事件から学ぶべき点は多岐にわたりますが、障がい者の権利を尊重し、適切な配慮を行うことが最優先であるということが明確に示されました。