「HSC(Highly Sensitive Child)」とは、感受性が極めて高く、日常の些細な刺激にも敏感に反応する子どもたちのことです。
彼らは、強い光や音、においなどの刺激に対して過度に反応し、これが日常生活での困難を引き起こすことがあります。しかし、彼らの特性は発達障がいや病気とは異なります。そこで、医学博士・臨床心理士・学校心理士スーパーバイザーの芳川玲子先生に、HSCとその違いについて尋ねました。
「とても感受性が強い子ども」という意味
「HSC」とは、「Highly Sensitive Child」の頭文字をとったもので、「とても感受性が強い子ども」という意味です。この言葉は、近年メディアや書籍を通じて広く知られるようになりましたが、一部では発達障がいと混同されがちです。
そこで、HSCと発達障がいの違いについて、医学博士・臨床心理士・学校心理士スーパーバイザーの芳川玲子先生にお聞きしました。
生まれながらに持っている先天的な特徴
現在わかっていることは、HSCが病気や発達障がいではなく、その人が生まれ持った「気質」であるということです。
気質とは、後天的な性格とは異なり、生まれながらに持っている先天的な特徴です。性格は環境や経験によって変化する可能性がありますが、気質は比較的変えることが難しいとされています。
HSCは感受性、発達障がいは脳
HSCは、感覚過敏の特性があります。彼らが日常生活で経験する刺激に過敏に反応し、これが彼らの生活に影響を与えることがあります。
一方で、発達障がいは脳の機能に問題があり、物事の処理に時間がかかる症状です。つまり、HSCは感受性が高すぎるために刺激に疲れるのに対し、発達障がいは脳の処理に問題があるために困難を抱えます。
彼らが適切なサポートを受けることが重要
HSCは、環境感受性や感覚処理感受性が高い子どものことであり、同じ環境下でも刺激を受ける度合いが異なります。そのため、彼らが適切なサポートを受けることが重要です。
また、周囲の理解と支援も必要です。HSCが生活で直面する困難を理解し、彼らが安心して生活できる環境を提供することが重要です。
学校では気の休まる間がない子どもたち
HSCの特徴には、さまざまなことが挙げられます。彼らは基本的に人混みが苦手であり、特に学校のような場所では緊張が高まります。しかし、彼らは知的能力に問題がなく、多動性もないため、個別支援学級の対象とはなりません。
教室では、他の子どもたちが叱られている場面などに遭遇すると、その怒りや緊張感に敏感に反応し、自分が叱られているかのようなダメージを感じることがあります。
また、避難訓練のサイレンや、チクチクした素材の衣類など、彼らが苦手とする刺激が多く存在します。
「いじめられた」と思ってしまうことも
友達との交流は楽しいものですが、彼らは人の言葉や表情を敏感に感知するため、その場面で疲れてしまうことがよくあります。さらに、彼らは考えを巡らせ過ぎて「いじめられた」と思ってしまうこともあります。また、算数の小テストで誤答をした際には、自信を喪失してしまうことがあります。HSCの子どもたちは、失敗や自身の評価に対して過剰にプレッシャーを感じ、常に自己評価に苦しむ傾向があります。そのため、学校は彼らにとって常にプレッシャーと戦う場所となりがちです。