『障がいとはどういうものか』『このような配慮が必要』を明らかにする必要 合理的配慮義務化とは?

凸凹村管理人

茨城県土浦市役所では、民間事業者に対する障がいへの合理的配慮義務化を前に、市職員向けの障がい理解研修が行われました。今年は初めて精神障がいをテーマにし、約50人の職員が当事者の声に耳を傾けました。

「精神障がい当事者会ポルケ」当事者同士が交流する場を提供

研修の講師は、「精神障がい当事者会ポルケ」の代表理事である山田悠平さん(39)でした。ポルケは2016年に発足し、「精神障がいがあることで経験する苦い経験や辛さも含めて、ひとりで抱え込まずに言葉にしていこう!」という合言葉のもと、当事者同士が交流する場を提供しています。精神障がいに関する調査や政策提言、学習会の開催なども積極的に行っており、地域社会における理解と支援の促進に努めています。

見た目では分からない精神障がいについて理解してもらう

山田さんは21歳の時に精神科を受診し、統合失調症と診断され、その後4度の入退院を経験しました。精神障がいによって、周囲とのコミュニケーションが難しくなり、抱えている悩みを共有できないことや友人関係の途絶えることもありました。そのような経験をもとに、当事者同士のつながりを作ろうと、「ポルケ」を始めました。

ポルケでは、見た目では分からない精神障がいについて地域の人々にも理解してもらうために、関連映画の上映や写真展を企画し、障がいへの啓発活動も積極的に行っています。山田さんは自らの経験を通じて、精神障がいのある人々が社会で理解され、支援される環境を作り出すために尽力しています。

「合理的配慮」の具体例として「午後2時からの研修」

山田さんは講演の冒頭で、研修が午後2時から始まったことを「合理的配慮」の具体例として述べました。市は最初、午前中の開催を希望していましたが、山田さんが体調面で午前中が難しいことを理由に時間変更を希望しました。

山田さんは、「電車のラッシュにあたると、いいパフォーマンスを発揮できず支障が出るかもしれない。」と述べ、時間の変更を提案しました。市はこの提案を受け入れ、「会場が取れたので午後にしましょう」と応じたことを山田さんは話しました。彼の特性に市が配慮を示し、当事者と実施者が対話を通じて、より適切な研修を行う状態を作り上げたことを指摘しました。

大事なのは「対話」だと強調

障がい者差別解消法では、事業者が障がいのある人に対して、障がいを理由に来店を拒否したり、サービス提供の時間や場所を制限したりすることが差別とされています。山田さんの体調に応じて市が研修時間を変更したことも、障がいの特性に柔軟に対応する合理的配慮の一例です。

一方で、事業者にとって過度の費用負担や物理的に実現不可能な場合は提供義務に反しないとされます。個別の場面で判断が求められますが、「障がいがあるからと特別扱いはできない」「前例がない」と無碍(むげ)に拒むことは認められていません。ここで大事になるのが「対話」だと山田さんは強調します。

「障がい者と事業者がともに解決策を検討していくことが重要」

「合意的配慮ではプロセスが重要になります。障がい者からの申し出への対応が難しい場合でも、できるかできないかを一方的に決めるのではなく、互いが持つ情報や意見を共有し、代替手段を見つけていくことが求められます。障がい者と事業者がともに解決策を検討していくことが重要です」。

山田さんは、合理的配慮の民間事業所への義務化が控えたこの時期を「重要なタイミング」と位置付けています。「合理的配慮には、障がい者の側から『障がいとはどういうものか』『このような配慮が必要』ということを明らかにする必要があります。しかし精神障がいには、偏見や差別の問題や、言語化に長けていない人もいます。今回の義務化は、自分の障がいをどう伝え、どのような配慮を望むかを改めて考える機会であり、私たちにとってエンパワーメントの機会だと思っています。過渡期ではありますが、障がいのない人と一緒に成長していくことが大切だと考えています」と述べました。

「障がいのある人の背景を理解してもらう必要」

山田さんは「対話が必要だが、障がいのある人の背景を理解してもらう必要がある。『権力勾配』という言葉があります。例えば、一緒に話しましょうと言っても、力関係があることで対等に話せないことがあります。行政など力を持つ側にも意識を促すことが重要です。障がい者団体を招いて勉強会をするという取り組みは、他の自治体にも広がってほしい」と語りました。

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