発達性協調運動障がい(DCD)とは?不器用なのには理由がある 理解されにくい障がい

凸凹村管理人

発達性協調運動障がい(DCD)に関する理解が深まるにつれて、不器用さや運動の困難さが、この障がいの重要な特徴として認識されるようになりました。洋服のボタンかけが苦手だったり、字がマス目からはみ出すことがあったり、リコーダーを上手に吹けなかったり、ボールをうまく投げられなかったりするのは、彼らの特性のひとつであり、生きづらさの原因でもあります。

一般的には、友達関係や学習の場面などが注目されることが多い中で、身体の使い方や運動の難しさは見過ごされがちでしたが、DCDの重要性が認識されるにつれ、これらの側面にも注目が集まっています。

発達性協調運動障がい(DCD)とは

発達性協調運動障がい(DCD)は、「協調」という脳の機能に問題があるため、運動や動作にぎこちなさが現れ、日常生活に支障をきたす発達障がいです。

この「協調」とは、身体の外部や内部からの多数の情報を統合し、運動企図や計画に基づいて運動や動作を行い、さらにその結果を考慮して微調整する脳の機能です。

日常生活の様々な場面で現れる

DCDの子どもたちは、体育の授業やスポーツだけでなく、靴ひもを結ぶ、箸やナイフ・フォークを使う、字を書く、はさみや定規・コンパスなどの文具・道具を使用する、リコーダー・鍵盤などの楽器を操作する、正確さを要求される理科実験を行うなど、日常生活や学校生活のさまざまな局面で不器用さが現れます。

DCDという診断名は1987年にはアメリカの精神医学会の診断基準であるDSMに登場しましたが、日本で広く知られるようになったのは、2013年に日本小児精神神経学会が学術集会のメインテーマとして取り上げてからと言われています。その後、2017年には日本DCD学会が設立されましたが、専門家の間でも認知度はまだまだ十分ではないとされています。

高い頻度でみられる障がい

最新の精神疾患の国際的な診断基準DSM-5-TRによれば、DCDの発生頻度は子どもの約5~8%と、AD/HD(注意欠如・多動性障がい)の約7.2%と同じぐらいであり、ASD(自閉症スペクトラム障がい)の約1~2%よりもはるかに高い頻度でみられます。

また、他の発達障がいとの併存率も高く、ASDの約80%、AD/HDの約30~50%、SLD(限局性学習障がい)の約50%に併存が見られ、他の発達障がいとも深く関係します。

重要なのは脳の機能である「協調」

一般的に、運動の不器用さは「身体の能力」と考えられがちですが、DCDの理解と支援のキーワードとして重要なのは脳の機能である「協調」です。武庫川女子大学の中井昭夫教授は、長年にわたりDCDの診療や研究、啓発活動を行ってきました。彼は日本DCD学会の設立に参加し、理事として活動し、第1回学術集会の大会長を務めました。

また、国際DCD研究・支援学会(ISRA-DCD)日本代表委員も務め、協調や感覚、睡眠など身体性と発達の関係を研究し、発達障がいを理解し、支援する上での重要性を強調しています。胎児の頃から環境との相互作用や感覚運動経験を通じて脳の発達が形成され、協調の発達は他の発達障がいの中核症状にも深く関わっていると指摘しています。

早期の気づきと適切なアセスメントに基づく包括的支援は、協調の問題だけでなく、その他の特性によるさまざまな生きづらさを軽減できる可能性があると述べています。

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