ALS患者の当事者「誰もが当たり前に生きられる社会を」ALS女性殺人事件 被告の医師に対し懲役18年の判決

凸凹村管理人

京都地方裁判所は、難病ALSを患う女性の殺害事件で無罪を主張していた医師に懲役18年の判決を下しました。裁判所は「短時間で軽々しく犯行に及び、生命軽視の姿勢が顕著で強い非難に値する」と指摘しました。

被告は元医師の山本被告と共に、ALSを患う林優里さんからの依頼を受け、薬物を投与して殺害したとして嘱託殺人などの罪に問われました。被告側は「林さんの自己決定権を尊重すべきだ」と主張しましたが、裁判所はこの主張を退けました。

「軽々しく殺害に及んだ」と指摘

川上宏裁判長は、自己決定権について、「個人が生存していることが前提であり、恐怖や苦痛に直面していても、みずからの命を絶つために他者の援助を求める権利などが導き出されるものではない」と明言し、被告側の主張を退けました。

また、「医師でありながら、SNS上の短いやりとりのみで、診察や意思確認もろくにできないわずか15分程度の面会で軽々しく殺害に及んだ」と指摘し、被告の行為を厳しく非難しました。さらに、130万円を受け取った後に犯行に及んだことを踏まえ、「被害者のためを思っていたとは考えにくく、利益を求めた犯行だった」と述べ、被告の生命軽視の姿勢を顕著にしたと指摘しました。

川上裁判長は、大久保被告が13年前に山本被告と共に関与した父親殺害事件についても言及し、「大久保被告が計画を練り上げ、重要で不可欠な役割を果たした」と指摘しました。その結果、懲役18年の判決が言い渡されました。大久保被告側は控訴する方針を示しています。

「刑が重くても軽くても娘が帰ってくるわけではない」

林優里さんの父親(83)は、判決後に行われた会見で、「刑が重くても軽くても娘が帰ってくるわけではなく、第2、第3の優里が出ないことを願うばかりです」と述べました。そして、「今回の事件によって、ALSという病気が世間に知られ、患者の苦労に目が向けられるようになった側面もあると思っています。ALS患者が娘のように『他人によって生かされている』とめげてしまわないよう、介助や介護の体制をもっとよくすることにつながってほしいです」と訴えました。

誰もが当たり前に自然に生きられる社会

ALS患者の当事者として会見を開いた増田英明さんは、「林さんの死にたいという一面的なことばや状況だけを切り取ること自体が差別です。私たちにとってはALSの仲間が殺された事実は変わることはなく許すことはできません。社会は生きられる人を生かす社会であるべきで、社会はそのためにあります。生きていたいと言わなくても、誰もが当たり前に自然に生きられる社会をどうつくるかに目を向けて考えてほしいです」と訴えました。

すべての人が当事者となる問題

同様に、ALS患者の岡部宏生さんも、「林さんは死にたいという思いと生きたいという思いを持っていました。そんな人を殺してしまったのです。そんなことが許されるわけがありません。生きることを支え続けられる社会であること。何より人の命について深く考えられる社会になってほしいとせつに願います。これは私たち障がい者や難病患者だけの問題ではありません。すべての人が当事者となる問題なのです。林さんが戻ってこないことに深い悲しみを禁じ得ません」と訴えました。

京都地方裁判所の判断

京都地方裁判所は、患者からの依頼に基づく殺害行為において、社会的相当性を考慮し、最低限必要な要件を示しました。

  • 【前提となる状況】

▼病状による苦痛の除去や緩和のために他に手段がなく、

かつ、

▼患者が自らの状況を正しく認識し、自らの命を絶つことを真摯に望む場合。

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