広汎性発達障がいの理解と支援 障がいのある人々のための支援と社会の未来

凸凹村管理人

広汎性発達障がい(PDD:Pervasive Developmental Disorder) は、発達障がいの一種であり、主に社会的な相互作用やコミュニケーション、興味や行動の限定性など、広範囲にわたる発達の遅れや異常を特徴とする障がい群の総称です。広汎性発達障がいは、複数の異なる症候群を含むカテゴリーであり、その代表的なものに自閉症スペクトラム障がい(ASD)、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障がい、レット症候群などがあります。

広汎性発達障がいは、通常幼児期に発症し、社会的スキルや言語能力に深刻な影響を及ぼしますが、症状の程度や影響は個人によって大きく異なります。近年では、これらの障がいが「自閉スペクトラム症」という広範な概念で統合される傾向にありますが、本記事では「広汎性発達障がい」というカテゴリーに焦点を当て、その特徴、原因、支援方法、課題などについて詳しく解説していきます。

広汎性発達障がいの種類

広汎性発達障がいには、主に以下の障がいが含まれます。それぞれに特有の症状や特徴があり、支援や治療法も異なります。

自閉症スペクトラム障がい(ASD)

自閉症スペクトラム障がいは、社会的なコミュニケーションや相互作用に困難を伴うとともに、興味や活動が非常に限られ、反復的な行動を示すことが特徴です。ASDは、知的障がいを伴うケースもあれば、知的能力が平均またはそれ以上である場合もあります。

症状の程度には個人差が大きく、非常に重度な自閉症から、軽度で社会生活にほとんど支障がないケースまで幅広いスペクトラムを持っています。

アスペルガー症候群

アスペルガー症候群は、自閉症スペクトラム障がいの一部とされ、知的発達や言語発達に遅れがないものの、社会的な相互作用やコミュニケーションに大きな困難を抱える障がいです。

通常、特定の分野に対して非常に強い興味や知識を持ち、深く没頭することが多いのが特徴です。アスペルガー症候群を持つ人々は、通常の日常生活で独立した生活を送ることができる場合もありますが、対人関係の築き方に苦労することが一般的です。

小児期崩壊性障がい

小児期崩壊性障がいは、通常2歳から4歳の間に正常な発達を見せていた子どもが、突然、言語能力や運動機能、社交性などのスキルを失い、知的・社会的機能に重大な障がいが生じるまれな発達障がいです。この障がいは、神経発達の異常が原因とされていますが、まだそのメカニズムは完全には解明されていません。

レット症候群

レット症候群は、主に女児に発症する神経発達障がいであり、幼少期に正常な発達をしていた子どもが突然言語や運動機能を失い、手をもむような特徴的な動作が見られるようになるのが特徴です。

この障がいは、通常6ヶ月から18ヶ月頃に発症し、重篤な知的障がいや身体的な制約を伴うことが多いです。遺伝的な要因が大きく関わっているとされています。

広汎性発達障がいの原因

広汎性発達障がいの原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的要因と環境的要因が複雑に絡み合っていると考えられています。以下は、現在までに判明している主な原因要素です。

遺伝的要因

広汎性発達障がいには、遺伝的要因が深く関与しているとされています。双子研究や家族内での発生率の高さから、広汎性発達障がいのリスクが遺伝的に引き継がれる可能性が指摘されています。

具体的な遺伝子変異としては、特定の染色体異常や、神経発達に関与する複数の遺伝子が関わっていることが示唆されていますが、単一の原因遺伝子は特定されておらず、複数の遺伝子が相互作用することによって発症することが多いとされています。

環境的要因

環境的要因も広汎性発達障がいの発症に影響を与える可能性があります。具体的には、妊娠中の母親の感染症や栄養状態、毒物への曝露、出産時の合併症などが関与していると考えられています。

また、早産や低出生体重もリスク要因の一つとして挙げられています。しかし、これらの要因がどの程度発症に影響するかについてはまだ不明な点が多く、さらなる研究が必要です。

脳の発達異常

脳の発達異常も、広汎性発達障がいの原因として注目されています。特に、脳のシナプス形成や神経伝達物質の異常が、社会的な相互作用やコミュニケーション能力に影響を与えると考えられています。

神経科学の研究では、広汎性発達障がいの人々は、特定の脳領域における活動や接続の異常が認められており、これが障がいの核心に関与している可能性があります。

広汎性発達障がいの診断

広汎性発達障がいの診断は、通常、幼児期に行われます。診断には、発達の遅れや異常な行動パターンに基づいて、専門医や発達障がいに精通した心理士、教育者が行うことが一般的です。

診断基準としては、国際的に使用されている**DSM-5(精神疾患の診断と統計マニュアル第5版)やICD-10(国際疾病分類第10版)**が基準となります。診断過程では、以下の点が重視されます。

  • 社会的相互作用における困難(例:対人関係の築き方が不自然、視線を合わせないなど)
  • コミュニケーションの遅れや異常(例:言葉を使わない、あるいは一方的な話し方をする)
  • 興味や活動の限定性(例:特定の物事に異常にこだわる、反復的な行動を示す)

診断後は、適切な支援や治療法を導入することが重要です。

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