双極性障がい(躁うつ病)は、極端な気分の変動を特徴とする精神疾患で、躁状態(異常な高揚感や過活動)と鬱状態(極端な抑うつや無気力)が周期的に繰り返されることから、その名が付けられています。
この障がいは、日常生活や人間関係に深刻な影響を及ぼし、適切な治療と管理がなされなければ、症状の悪化や社会的な孤立を招くリスクがあります。双極性障がいは、人口の約1%から2%に見られるとされており、非常に一般的な精神疾患の一つです。本記事では、双極性障がいの症状、原因、治療法、そして社会的影響について、詳細な解説を行います。
双極性障がいの特徴
躁状態
双極性障がいの「躁状態」は、エネルギーや活動性が異常に高まる状態です。この状態では、気分が高揚し、異常な自信を持ったり、非常に社交的になることが多いです。具体的な症状には以下のようなものがあります。
- 異常な高揚感や幸福感:通常よりも異常にハイな気分が続き、周囲からも明らかに過剰な幸福感が見て取れることがあります。
- エネルギーの過剰な増加:睡眠が少なくても元気でいられ、活動が活発になります。これにより、長時間働いたり、社交活動に熱心になることもあります。
- 集中力の欠如:思考が次々と移り変わり、アイデアが止まらない「考えが飛ぶ」状態に陥ります。結果として、集中が難しくなり、物事を完了させるのが難しくなります。
- リスクの高い行動:躁状態では判断力が低下し、リスクの高い行動を取ることがよくあります。例えば、無謀な買い物やギャンブル、性行動、投資などが挙げられます。
- イライラや攻撃的行動:気分が高揚しているために、少しのことでも苛立ちやすくなり、攻撃的な態度を取ることがあります。
軽躁状態
軽躁状態は、躁状態ほど重篤ではないが、通常の気分と比べて高揚している状態です。症状は躁状態と類似していますが、その程度が軽いため、周囲からは「元気が良い」「積極的」と好意的に見られることがあります。しかし、軽躁状態が続くと、本人はコントロールを失い、日常生活や仕事に支障をきたすことがあります。
鬱状態
双極性障がいのもう一つの極は「鬱状態」です。この状態では、気分が極端に落ち込み、エネルギーや意欲が低下します。主な症状には次のようなものがあります。
- 深刻な抑うつ感:長期間にわたって気分が落ち込み、何事にも興味や楽しみを感じなくなります。この状態は、2週間以上続くことが一般的です。
- 無力感や罪悪感:自分に対して極度に否定的な考えを持ち、無価値感や罪悪感を抱くことがよくあります。
- 疲労感とエネルギー不足:鬱状態では、日常的な活動すら困難に感じ、簡単なタスクも遂行できなくなります。これにより、仕事や学業、家事が放棄されることが多いです。
- 食欲と睡眠の変化:食欲が急激に減少したり、逆に過食に走ることがあります。睡眠に関しては、眠れない、または過眠といった極端な変化が見られることが一般的です。
- 自殺念慮や自傷行為:鬱状態が長く続くと、自殺を考えたり、自傷行為に走るリスクが高まります。これは、双極性障がいにおいて特に注意が必要な症状です。
双極性障がいの種類
双極性障がいは、大きく2つのタイプに分類されます。それぞれのタイプには異なる特徴があり、治療や管理のアプローチも異なる場合があります。
双極性障がいI型
双極性障がいI型は、完全な躁状態と重度の鬱状態の両方が見られるタイプです。躁状態が1週間以上続き、日常生活に大きな支障をきたすことが多く、場合によっては入院が必要となることがあります。このタイプでは、鬱状態も非常に重篤で、長期間にわたることが一般的です。
双極性障がいII型
双極性障がいII型は、軽躁状態と重度の鬱状態を特徴とするタイプです。躁状態ほどの重篤な症状は見られないものの、鬱状態はI型と同様に深刻です。軽躁状態はしばしば「良い時期」として誤認されることがあるため、正確な診断が難しいことがあります。
サイクロチミア
サイクロチミアは、軽躁状態と軽度の鬱状態が周期的に繰り返される軽度の双極性障がいです。サイクロチミアの患者は、気分の波が激しいものの、症状が比較的軽度であるため、日常生活には支障が少ないことが多いです。しかし、症状が進行すると双極性障がいI型やII型に移行する可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。