「ADHD」という言葉をテレビや雑誌の中で目にする機会が増えてきました。発達障がいについて紹介される際によく取り上げられる種類の一つが、この「ADHD(注意欠如多動症)」です。
このページでは、大人のADHDについて診断基準なども踏まえながら、長所や苦手なこと、対応策についてご紹介します。また、大人のADHDにはどんな治療方法があるのかについても解説しているので、参考にしてください。
大人のADHD(注意欠如多動症)とは?
ADHD(注意欠如多動症)は、一般的には子どもに見られる症状として知られていますが、実際には大人になってから初めてADHDと診断されるケースも多く存在します。子どものADHDは、例えば「突然衝動的に話し出す」「じっとしていられず、常に動き回る」といった特徴がよく知られています。しかし、大人の場合、これらの行動は異なる形で現れることが多く、そのため気づかれにくいこともあります。
大人のADHDにおいては、主に注意力の持続が難しいことや、細部に対して注意が向きにくいことが特徴的です。このため、仕事や家事などの日常生活の中で、ケアレスミスを頻繁に起こしてしまったり、物忘れが多くなるといった問題が生じます。たとえば、会議中に集中力が続かず、重要な内容を見逃してしまうことや、日常的なスケジュール管理において予定を忘れてしまうことが挙げられます。これにより、職場や家庭内でのトラブルやストレスが増えることがあります。
ADHDの特性を持っている人でも、子どもの頃にはその症状が目立たずに見過ごされることがしばしばあります。そのため、成人してから新たなライフステージに移行する際に、例えば就職や結婚などの生活の大きな変化によって、対人関係や行動範囲が急に複雑化し、その結果として初めて問題が顕在化することがあります。こうした状況に直面した際、適切に対処することができず、ADHDの症状に気づくケースが少なくありません。さらに、職場でのパフォーマンスの低下や人間関係の摩擦が深刻化することがあり、これがストレスや不安を引き起こす要因となることもあります。
大人のADHDかも?よくある困りごとをチェック
大人のADHDによくある困りごととして、以下のような項目が挙げられます。
- 騒音や雑音があると、すぐに注意が散漫になる
- 周りが気になって目の前の仕事に集中できない
- 仕事や家事などで優先順位をつけることや、その通りに実行することが難しい
- 短気で、些細なことで自分を見失うことや、突発的に怒り出すことが多い
- 課題を遂行できず、途中で投げ出してしまう
- 衝動買いをしてしまう
- 約束の時間に遅れる、約束を忘れる、締め切りや期限に間に合わない
- 鍵や財布などをしばしば紛失する
- 仕事や生活で忘れ物が多い
- 注意力や集中力に欠け、他人と話していてもストーリーを追えない、内容を忘れてしまう(他人から話しかけられても、話を聞いていないように見える、と指摘されることが多い)
- 単調な仕事や読書、計算を持続することが苦痛
- 他人の話をさえぎり、一方的にしゃべり出してしまう
これらの項目はADHDの正式な診断基準ではありませんが、思い当たる項目が多い場合はADHDの可能性があるといえるでしょう。
ADHDの特徴
ADHDの特徴について、ADHDは大きく3つのタイプに分類されます。これらのタイプはそれぞれ異なる特性を持ち、個人によって現れる症状も異なります。
不注意優勢型
このタイプは、一般的に「うっかり」ミスが多い傾向にある人に見られます。たとえば、日常生活において物を忘れることが頻繁にあり、約束を忘れてしまうこともよくあります。誰しも一度は物忘れやうっかりした経験があるかもしれませんが、不注意優勢型のADHDを持つ人は、その頻度や度合いが特に顕著です。
また、注意力が散漫になりやすく、物事に長時間集中することが難しいと感じることが多いです。そのため、職場や家庭での作業中にミスが生じやすく、自己管理が困難になる場合があります。さらに、整理整頓が苦手で、物事を体系的に整理する能力に欠けていると感じることもあります。
多動・衝動優位型
このタイプの人は、ひとつの物事にじっくり取り組むことや、ひとつの場所に長時間とどまることが苦手であることが特徴です。例えば、会議中や授業中に落ち着かず、無意識に貧乏ゆすりをしてしまったり、じっとしていることが困難だと感じることがあります。内心では常に動きたいという衝動があり、気持ちのコントロールが効かない場合も少なくありません。
このため、感情が高ぶったときに思わず言い返してしまったり、後先を考えずに思ったことを口にしてしまうことが多いです。また、計画を立てて慎重に行動するよりも、その場の直感で即座に行動を起こす傾向が強く、これが時には問題を引き起こす原因となることがあります。
混合型
最後に、混合型は「不注意」と「多動・衝動性」の両方の特徴を併せ持つタイプです。このタイプの人は、不注意優勢型と多動・衝動優位型の双方の特性を持っており、これらの症状が組み合わさって現れることが多いです。
そのため、日常生活や仕事において、複数の課題に同時に直面することが多く、ストレスや困難を感じることがしばしばあります。このタイプのADHDは、他の2つのタイプに比べてより複雑で、多様な症状を呈することが多いため、適切な対応が求められます。