双極性障がいとは?理解と治療、うつ病との違いとその経過

凸凹村管理人

双極性障がいは、その名前の通り、「躁」と「うつ」という極端な気分の変動が特徴の精神疾患です。この病気は、日常生活に大きな影響を及ぼし、患者本人や周囲の人々にとって大きな負担となることが少なくありません。

例えば、躁状態ではエネルギーが溢れ、気分が高揚し、活動的になる一方で、判断力が鈍り、無謀な行動に走ることがあります。一方、うつ状態では、深い絶望感や無力感に苛まれ、日常生活が困難になることが多いです。

このように、双極性障がいは「躁」と「うつ」の状態が交互に現れるため、適切な診断と治療が重要です。治療が適切に行われない場合、患者の生活はもちろん、家族や社会全体にも大きな影響を与える可能性があります。

この疾患に対する理解とサポートは、患者が安定した生活を送るために不可欠です。これから、双極性障がいの具体的な症状や治療法について、さらに詳しく見ていきましょう。

双極性障がいとは?

双極性障がいは、うつ病を含む「気分障がい」のひとつで、統合失調症と共に、二大精神疾患の一つとされてきた疾患です。うつ状態だけがおこる病気を「うつ病」と言いますが、このうつ病とほとんど同じうつ状態に加え、うつ状態とは対極の躁状態もあらわれ、これらを繰り返す、慢性の病気です。

昔は「躁うつ病」とよばれていましたが、現在では両極端な病状がおこるという意味の「双極性障がい」とよんでいます。なお、躁状態だけの場合でもないわけではありませんが、経過の中でうつ状態がでてくる場合も多く、躁状態とうつ状態の両方がある場合とは、特に区別せず、やはり双極性障がいと呼びます。

なお、WHOによる最新の国際疾患分類であるICD-11では、「障がい」という言葉が誤解を招く可能性があるとの考えから、新たに「双極症」という日本語訳が使われる予定です。

双極性障がいは躁状態の程度によって二つに分類

家庭や仕事に重大な支障をきたし、社会的後遺症を残してしまいかねないため、入院が必要になるほどの激しい状態を「躁状態」といいます。一方、端から見て、明らかにいつもと違っていて、気分が高揚し、眠らなくても平気で、仕事もはかどるけれども、本人も周囲の人も、それほど困らない程度の状態を、「軽躁状態」といいます。

「躁状態」がおこる双極性障がいを、「双極Ⅰ型障がい」といいます。ほとんどの場合、うつ状態も起きますが、躁状態があれば、うつ状態がなくても双極Ⅰ型障がいと診断されます。

「軽躁状態」と「うつ状態」の両方がおこる双極性障がいを、「双極Ⅱ型障がい」といいます。

治療しないでいると、躁状態とうつ状態を何度も繰り返し、その間に人間関係、社会的信用、仕事や家庭といった人生の基盤が大きく損なわれてしまいますが、双極性障がいは精神疾患の中でも治療法や対処法が比較的整っている病気で、薬でコントロールすれば、それまでと変わらない生活を送ることが充分に可能です。

このように、双極性障がいは、うつ状態では、死にたくなるなど症状によって生命の危機をもたらす一方、躁状態ではその行動の結果によって社会的生命を脅かす、重大な疾患であると認識されています。

患者数

うつ病は、欧米ではおよそ15%の人がかかるとされている、ありふれた病気です。一方、双極Ⅰ型障がいを発症する人はおよそ1%前後、双極Ⅰ型、Ⅱ型の両方を含めると2~3%と言われています。

日本ではうつ病の頻度は7%くらいで、Ⅰ型、Ⅱ型を合わせた双極性障がいの人の割合は0.7%くらいと報告されていますが、欧米と日本に差があるのか、あるいは調べ方の問題なのか、まだ結論は出ていません。単純計算でも、日本に数十万人の患者さんがいると見積もられますが、日本での本格的な調査は少なく、はっきりしたことはわかっていません。

海外では、うつ状態で病院に来ている方のうち、20~30%の方が双極性障がいであると言われています。うつ病は一過性のものであるのに対し、双極性障がいは躁状態とうつ状態を何度も再発するので、発症頻度の割には、病院に通院している患者さんの数は多いと考えられます。

原因・発症の要因

双極性障がいの原因はまだ完全には解明されていません。一卵性双生児では二卵性双生児に比べて、一致率が高いことから、ゲノム要因が関係していることは間違いありません。しかし、ゲノムがほぼ同じ一卵性双生児でも、二人とも発症するとは限らず、環境因も関係していると考えられます。

双極性障がいのリスクとなる環境因としては、周産期障がい、妊娠中のインフルエンザ感染や母親の喫煙など、周産期の要因が多いことが報告されています。早期の逆境があると、症状・経過にマイナスの影響を与えると報告されており、直近のストレスが発症や再発の誘因になると言われていますが、これらは原因とは言えないようです。

この病気は、精神疾患の中でも、もっとも身体的な側面が強い病気と考えられており、ストレスが原因となるような「心」の病気ではありません。精神分析やカウンセリングだけで根本的な治療をすることはできず、薬物療法が必要です。そして、薬物療法と合わせて、心理・社会的な治療が必要となります。

症状

双極性障がいでは、気分が高まる躁状態と気分が落ち込むうつ状態がくり返しあらわれます。 躁状態では、性格が変わったように気分が高揚して、異常なハイテンション状態になります。一方うつ状態では、心も体もエネルギー切れのような状態となり、ネガティブな気分が永遠に続く気がします。

躁状態

双極Ⅰ型障がいの躁状態では、ほとんど眠らずに動き回り、休む間もなくしゃべり続け、家族は疲労困憊してしまいます。活動的になりますが、一つのことに集中することができず、結局は何一つ仕上げることができません。

また、高額な買い物をして、多額の借金を作ってしまったり、法的な問題を起こしてしまったりする場合もあります。失敗の可能性が高い無茶なことに次々と手を出して、これまで築いてきた社会的信用を一気に失ったり、仕事をやめざるを得なくなることもあります。さらには、自分には超能力があるといった誇大妄想に発展してしまう場合もあります。

軽躁状態

一方、双極Ⅱ型障がいの軽躁状態は、いつもとは人が変わったように元気で、人間関係に積極的になり、短時間の睡眠でも平気で動き回り、いつもに比べて明らかに「ハイ」に見えますが、少し行きすぎという感じを受ける場合もあるとはいえ、躁状態のように周囲に迷惑をかけることはありません。

躁状態や軽躁状態では、多くの場合、本人は自分の変化を自覚できておらず、大きなトラブルを起こしていながら、患者さん自身はほとんど困っていません。気分爽快でいつもより調子が良いと感じており、周囲が困惑していることをなかなか理解することができません。

うつ状態

患者さんにとって、最もつらいのは、うつ状態の時です。言葉にはできないほどうっとうしい気分が、一日中、毎日毎日続く「抑うつ気分」と、あらゆることに全く興味をもてず、何をしても楽しいとか嬉しいと思えなくなる、「興味・喜びの喪失」の2つが、うつ状態の中核症状で、これら2つのうち少なくとも1つ症状があることが診断に必要とされています。

これら2つの必須症状を含めて、早朝覚醒、食欲の減退または亢進(および体重の減少または増加)、疲れやすい、動作がゆっくりになってしまう、自責感、集中できない、自殺念慮といったさまざまなうつ状態の症状のうち、5つ以上が2週間以上毎日出ている状態が、うつ状態です。

双極性障がいにおいては、最初のうつ状態あるいは躁状態から、次の病相まで、5年位の間隔があるのが普通です。躁やうつがおさまっている間は特に症状はありません。しかし、この時、薬で予防していないと、ほとんどの場合再発し、躁状態やうつ状態がおこります。治療がきちんとなされていないと、躁状態やうつ状態という病相の間隔は経過と共に、次第に短くなっていき、しまいには急速交代型(年間に4回以上の躁状態、うつ状態)へと移行し、薬が効きにくくなってしまいます。

躁状態の期間とうつ状態の期間を比べると、うつ状態の期間の方が長く、本人は躁状態や軽躁状態の自覚がない場合も多いため、多くの患者さんは、うつ状態になった時に受診します。しかしながら、病院にかかったときに、以前の躁状態や軽躁状態のことがうまく医師に伝わらないと、うつ病と誤解されてしまい、治療がうまく進まないことがあります。このように、双極性障がいが見逃されている場合も少なくないと思われます。うつ病として治療を受けているけれど、過去に躁状態や軽躁状態があったかも知れない、と思う人は、必ず医師に伝えていただきたいと思います。

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