高次脳機能障がいとは、脳卒中などの病気や交通事故などで脳の一部を損傷したために、思考・記憶・行為・言語・注意などの脳機能の一部に障がいが起きた状態をいいます。
外見からは分かりにくい障がいであるために、周りの人から十分に理解を得ることが難しく誤解されてしまうことがあります。
高次脳機能障がいの色々な症状
高次脳機能障がいは、病気やけがによって脳に損傷を負うことで脳機能に障がいが出て、日常生活や社会生活に支障が生じる状態をいいます。
高次脳機能障がいは、単純な知覚障がい(痛みや感覚がないなど)や運動障がい(手足を動かしにくいなど)ではなく、より高いレベルで、知覚と運動をつなぎ合わせて判断などを行なうネットワーク機能の異常です。「知覚」を例にとると、触っていることは分かるものの、触ったものが布か紙か分からない、といった状態です。
- 注意障がい
集中力が続かない。気が散りやすい。複数のことを同時にできない。
- 記憶障がい
病気やけがの前のことは覚えているのに、新しい出来事を覚えられない。
- 失語
言いたい言葉が出てこない。聞こえていてもその意味が分からない。
- 遂行機能障がい
段取り良く物事を進めることができない。優先順位がつけられない。
- 半側空間無視
目では見えているのに、片側に注意がいかないため、見落としたり、ぶつかったりしやすい。
- 感情と社会的行動の障がい
感情や欲求のコントロールができない。やる気が起きない。人柄が変わってしまう。
高次脳機能障がいの原因
高次脳機能障がいは、さまざまな原因によって起こります。
脳外傷(頭部外傷)
交通事故や高いところから転落して、頭を強く打ち脳に損傷を受けることです。
- 硬膜外血腫
- 硬膜下血腫
- 脳挫傷
- びまん性軸索損傷
- 脳出血
脳卒中(脳血管障がい)
脳の血管がつまったり破れたりしてその部分が機能しなくなる病気です。
- 脳梗塞
- 脳出血
- くも膜下出血
- もやもや病
その他
他に脳をおかす感染症や自己免疫疾患、中毒などによっても高次脳機能障がいは起こります。
- 脳炎(ヘルペス脳炎など)
- 低酸素性脳症 ビタミンB欠乏症
- 腫瘍
高次脳機能障がいの種類
記憶障がい
記憶とは、「新しい経験が保存され、その経験が後になって、意識や行動の中に再生されること」と定義されます。
エピソード記憶、意味記憶、手続き記憶などがありますが、この中でもおかされやすいのはエピソード記憶です。高次脳機能障がいでは、新しいことが覚えられず、今見たこと、聞いたこと、したことを忘れてしまいます。病気や事故にあう以前にさかのぼって記憶がなくなることもあります。
- 何を食べたか忘れる
- どこにしまったか忘れる
- 何度も同じことを言う
- 買い物に行っても何を買うのか忘れてしまう
- 忘れていることさえ忘れる
注意障がい
外からの刺激に対して、注意を向け持続したり、変換したり、また、無関係の刺激を抑制したり、あるいは同時にいくつもの刺激に注意を向けたりすることの障がいです。
- まわりの状況に気が付かない
- 集中できない
- 周囲のことにすぐ気を取られる
- 落ち着かない
- 同時にいくつものことができない
- ミスが多く効率が上がらない
遂行機能障がい
目的を持った一連の活動を段取り、手順を考えて効率よく行うことの障がいです。この機能をうまく働かせるためには、記憶、言語、思考、推理、判断などの機能をまとめて使えることが必要です。
- 自分から行動が開始できない
- 計画ができない
- 順序良くまとまった形で実行できない
- 出来ばえを気にしない
社会的行動と情緒の障がい
状況に適した行動が取れない、感情のコントロールがうまくできない、欲求が抑えられないといった障がいです。
- イライラしやすい
- 怒りっぽい
- 一つのことにこだわる
- すぐパニックになる
- 何もしようとしない
- 過度になれなれしい
- 子供っぽい
- ほしいものが我慢できない
言語とコミュニケーションの障がい
失語症
失語症は言語中枢が損傷されることによって起こる言語そのものの障がいです。理解がよく、とつとつと話すタイプと、なめらかだが、言い誤りの多い、理解の悪いタイプがあります。
- なかなか言葉が出ない
- 言い間違いをする
- 読み書きができない
- 簡単な計算ができない