知的障がい者の親の苦悩「こんな時どうすれば…」強度行動障がいを乗り越えるためには

凸凹村管理人

知的障がいを持つおとなの親たちの苦悩は、しばしば周囲から理解されにくいものです。知的障がい児も成長し、やがておとなになります。しかし、その知的な発達は子どものままです。

一方で、体格はおとな並みに成長し、難しい話を理解することが難しく、意思表示もうまくできません。具体的な要求以外に自分の思いを伝えることはできなくても、体力は非常に強く、暴れ始めると止めるのは困難です。

親たちが最も悩むのは「強度行動障がい」と呼ばれる問題です。これは、自傷行為や興奮、癇癪(かんしゃく)、暴言、暴力、強迫行動(こだわり)、性的逸脱行動などを含みます。

場合によっては虚言、窃盗、器物破損、他害行為などの反社会的行動にまで至ることもあります。

さらに、これらの問題行動に加えて、小児期から続く夜尿、尿失禁、便失禁、便こねなどの排泄の問題が残ることもあります。このような状況において、親たちはどう対処すればよいのでしょうか。

精神科医と知的障がい者

知的障がい者の強度行動障がいに対応することは、親や介護者、学校関係者、施設関係者にとって大変な課題です。独力での対処は難しく、医師の助けを借りることが必要となります。

小学生くらいまでは小児科医が対応してくれることが多いですが、中学生以上になると行動が過激化し、精神科医の助けが必要になることが多くなります。精神科医は、向精神薬(こころに効く薬)の使用に精通しており、多種多様な薬剤を用いて行動を制御することが一般的です。

向精神薬の多くは保険適用外

しかし、知的障がいの行動障がいに対して向精神薬の多くは保険適用外です。特に抗精神病薬は統合失調症の治療薬であり、知的障がい者の興奮を鎮めるためのものではありません。知的障がい者は精神病患者ではなく、統合失調症に罹患しているわけでもありません。そのため、知的障がい者に薬剤を使う場合、制度上承認されていない使い方(オフラベル使用)を行うことになります。

さらに、一部の抗精神病薬には糖尿病のリスクがあり、すべての抗精神病薬には体重増加のリスクがあります。自己管理能力の低い知的障がい者にとって、これらの薬は生活習慣病のリスクを高める可能性があります。そのため、向精神薬の使用は慎重に検討されるべきです。

親や介護者、医療関係者は、このようなリスクを理解しながら、知的障がい者の行動障がいに適切に対処する方法を模索し続ける必要があります。社会全体での支援と理解が重要です。

プラダー・ウィリー症候群の強度行動障がい

筆者はもともと知的障がい者の行動症状の専門家ではありませんでした。しかし、現職に就いてからプラダー・ウィリー症候群という希少疾患の専門家がいる病院に勤務することになり、その小児科医から行動症状の緩和を依頼されるようになりました。

引き受けているうちに、200人近いプラダー・ウィリー症候群の患者を診ることになったのです。この症候群は、程度の差はあれど、思春期以降に強度行動障がいを呈することが特徴です。

筆者がプラダー・ウィリー症候群の患者を診る中で、「精神科医のわりに行動症状に強い」という評判が小児科医たちの間で立ち、次第にプラダー・ウィリー症候群以外の知的障がい者に関しても、行動症状のコントロールを頼まれるようになりました。

1万5000~2万人に1人の割合で発生する遺伝疾患

プラダー・ウィリー症候群は、1万5000~2万人に1人の割合で発生する遺伝疾患で、行動症状は多彩かつ激烈です。また、この症候群の患者は低基礎代謝と満腹中枢機能不全という深刻な問題を抱えています。前者は太りやすい体質を意味し、後者は食べても満腹感を得られないことを意味します。

これらの問題が併存するため、プラダー・ウィリー症候群の患者は容易に病的肥満に陥ります。厳密な食事コントロールを行わない限り、糖尿病、肺炎、皮膚感染症、心不全などを発症し、短い生涯を終えることが多いです。

肥満とその関連疾患が短命の原因であることは共通

プラダー・ウィリー症候群の平均死亡時年齢は、Bellisら(2022年)は21歳、Butlerら(2017年)は29.5±16歳と報告しており、かなりのばらつきがあります。しかし、どの報告も肥満とその関連疾患が短命の原因であることは共通しています。

日本国内、特に獨協医科大学埼玉医療センターのような実践知の蓄積された病院に通っている患者は、幼少期から徹底的な生活習慣指導を受けており、家族の意識も高いです。その結果、おそらくButlerら(2017年)のデータよりもプラダー・ウィリー症候群の寿命は延びていると考えられます。それでも、筆者たちも10代、20代で多くの患者を見送ってきたことは確かです。

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