手に負えないのはADHDだから?家族に順位を付け、父親を「君づけ」で呼ぶ不登校小6男子の場合

凸凹村管理人

小学6年生の息子は忘れ物が多く、自己中心的で周囲に迷惑をかけることも謝らない。彼は次第にクラスで孤立し、ついには副校長先生に叱責されたことがきっかけで「つまらないから」と不登校になりました。家では父親を「君づけ」で呼ぶことも珍しくなかったといいます。

「病名をつけて安心してはいけない」

昨今、発達障がいや精神疾患が広く注目されています。ADHDやASD、うつ病、摂食障がいなど、これらの病名をインターネットで検索すると数多くの情報が見つかり、書店にはそれらを扱った専門書のコーナーが設けられています。多くの親が自分の子供についても同様の問題を抱えているのではないかと考え、病院に相談に行くことも少なくありません。しかし、病名を得たからといって問題が解決するわけではありません。精神科医の関谷秀子氏は、「病名をつけて安心してはいけない」と警告します。

「精神疾患の情報は氾濫していますが、思春期などの難しい時期においても、子どもの心の問題の背景には親子関係や夫婦関係の問題が潜んでいることが少なくありません

中公新書ラクレの『不登校、うつ状態、発達障がい 思春期に心が折れた時 親がすべきこと』には、関谷氏が実際に診断した14人の思春期の子どもたちとその家族の実話が描かれています。ここでは、第10章「落ち着きがない。忘れ物が多い」(父親を「君づけ」で呼ぶ小6男子)を抜粋して紹介します。

ADHDと診断するには家庭や学校など2つ以上の状況で存在することが必要

注意欠如・多動性障がい(ADHD)とは不注意、多動性、衝動性の3つを主症状とします。行動の制御に関連する神経生物学的な障がいともいわれていますが、まだ原因ははっきりしていません。

不注意とは「勉強に集中できない」「忘れ物が多く、頻繁に物をなくす」「宿題の提出を忘れる」「提出期限に間に合わない」などです。多動性は「落ち着きがない」「じっと座っていられない」、衝動性とは「自分の順番が待てない」「黙っていることができずしゃべり出す」「ほかの人の邪魔をする」などの行動を指します。ADHDと診断するには、これらの症状が家庭や学校など2つ以上の状況で存在することが必要です。

また、多動性や衝動性の症状は、2~3歳から始まって、幼稚園、小学校低学年頃に顕著となり、思春期、青年期には改善することが多くあります。一方で、不注意の症状は成人になっても残ることがあります。

母親のウソで「もう二度と病院には行かない」

J君は小学6年生です。5年生の頃から、授業中に友達にちょっかいを出して邪魔をしたり、友達の図工の作品を落として壊したり、宿題を忘れたりすることが多くなっていきました。校内ランニングや合唱練習など、自分がやりたくないことがある日は、わざと遅刻したり、サボったりもするようになりました。

先生に注意されると、口答えをしたり、茶化(ちゃか)して逃げたりしていました。自分勝手な行動、それに周囲に迷惑をかけても謝らずに威張っていることなどから、クラスの中でも次第に孤立していきました。

配慮が裏目に

ある日、副校長先生に強く叱責されたことをきっかけに、「学校はつまらないから、もう行かない」と家でゲームをしているようになりました。「忘れ物が多く、落ち着きもない。ADHDではないか。専門医を受診するように」と養護教諭から言われ、クリニックに両親が来院しました。

J君の姿はありません。両親は「本人は、絶対に受診はしない」と断言しました。それには、こんな背景がありました。養護の先生から、ADHDと指摘されたことにショックを受けた母親は、すぐに母方の祖父に相談しました。そして、祖父が選んだ医療機関にJ君を連れていったそうです。

このように、母は困ったことがあると、夫ではなく自分の父親を頼りにすることが多かったようですが、問題はそのやり方でした。母親はJ君に「自分が病院へ行くので、付き添ってほしい」とウソをついたのです。それは本人に余計な心配をさせず、速やかに受診させるためという、祖父のアドバイスでした。

ところが、母親の付き添いのつもりで病院に行ったJ君自身が、「まずADHDの検査を受けて、その結果次第で薬を飲むか、カウンセリングを受けるか」と医師から言われました。騙されたことを知り、「もう二度と病院には行かない」と宣言したそうです。J君が驚き、怒り、病院に対する反発心を覚えたのも無理はないかもしれません。そこで、私は両親から詳しい話を聞いていくことにしました。

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