障がい者教育の課題と展望 国連が日本に突きつけた厳しい課題とは

凸凹村管理人

障がい者権利委員会が提言する「特別支援教育の廃止」は、障がいのある子どもたちが社会においてより包括的な教育を受けられるよう求めるものです。この提言は、障がい者の権利をより尊重し、彼らが自立して生きるための支援を強化するための重要な一歩となり得ます。

特別支援教育は、長年にわたって障がいのある子どもたちのための有益なサービスと見なされてきましたが、その一方で、分離教育や隔離的なアプローチが障がい者の社会的な包摂を妨げる可能性があるという懸念もあります。特別支援教育の廃止は、彼らが通常の学校環境で学び、成長する機会を提供することを目指しています。

国際連合で日本政府への初めての審査

インクルーシブ(inclusive)とは、「全部ひっくるめる」という意味です。性別や年齢、障がいの有無などが異なるさまざまな人がありのままで参画できる新たな街づくりや、商品・サービスの開発が注目されています。

では、「インクルーシブな社会」とはどのような社会でしょうか。医療ジャーナリストで介護福祉士の福原麻希さんが、さまざまな取り組みを行っている人や組織、企業を取材し、その糸口を探っていきます。

今夏、スイス・ジュネーブにある国際連合(以下、国連)欧州本部で、「障がい者権利条約」に関する日本政府への初めての審査が開かれました。障がい者権利条約とは、障がい者の尊厳と権利を保障するための国際的な合意であり、障がいのある人とない人が平等で対等に社会参加できるよう、その方向性が明文化されています。

日本の障がい者権利条約審査、建設的な対話が始まる

日本は2014年に障がい者権利条約を締結しました。この条約では、国内での条約内容の実現状況を障がい者権利委員会に報告する仕組みが整えられており、今回が初めての報告となりました。

国連はこの条約の審査を「建設的対話」と称しています。この審査は批判的な評価を目的とするのではなく、日本政府と障がい者権利委員会が報告書や面談を通じて対話を行い、政府から状況改善に向けた前向きな回答を引き出すことを目指しています。

「私たち抜きに、私たちのことを決めないで」

この対話では、障がい者権利委員会の委員が障がい当事者団体や関連するNGOの声を積極的に取り入れ、質疑や総括所見に反映させます。これは、「私たち抜きに、私たちのことを決めないで」という理念に基づいたものであり、国連で採択された障がい者権利条約の経緯が背景にあります。

今回も、政府の報告書が公表された後、日本障がいフォーラムなどの団体が政府と意見交換を行いながら、障がい者権利委員会に対するパラレルリポートを提出しました。これにより、障がい者の声が審査に反映され、より包括的な意見が得られることが期待されています。

ジュネーブの議場での熱心な対話

ジュネーブの議場では、障がい当事者と関係者が建設的な対話の様子を傍聴しました。数日前には、障がい者権利委員らがロビー活動を展開し、窮状を直接訴えました。100人以上の受審国の障がい当事者と関係者が議場に集まり、建設的な対話が初めて行われたことが注目されました。

一方、日本政府の障がい者権利委員からの質問への回答は、終始制度の説明にとどまり、建設的な対話になっていなかった印象がありました。

建設的な対話の様子は国連のインターネットテレビで世界にライブ配信され、現在もアーカイブで視聴できます。

「同年代の友達と学校生活を送りたい」

東京都内在住の五十嵐健心(けんしん)さん(19)も、今回ジュネーブに入りました。彼は、障がい児が地域の学校で学べるように就学や学校生活を支援するNGO「障がい児を普通学校へ・全国連絡会」の支援を受け、障がいのある子どもと家族3組が派遣されました。

知的障がい児を排除する現状に抗議すべく、健心さんと玉枝さんはジュネーブへ向かいました。

健心さんはダウン症で、中度の知的障がいを持ちながらも、「同年代の友達と学校生活を送りたい」と願い、特別支援学校ではなく地域の小中学校へ通いました。同級生と共に学び、彼は自らを障がい者とは認識しておらず、むしろ、障がいのある人との集まりを避ける傾向があります。母親の玉枝さんは、「学校に障がい者がいなかったからではないか」と推測しています。

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