増え続ける発達障がいと社会的課題 正常な人が「異常」扱いされている?

凸凹村管理人

2023年の国内の精神科患者は、入院と通院を合わせて750万人に上る。日本人の15人に1人が精神科で治療を受けている計算だ。

「うつ病」や「発達障がい」など、一般的な精神疾患に加えて、近年は社会的な関心が高まる中、診断される人々も増加している。この深刻な状況を警告する声の一つが、精神医療の現場で人権侵害問題に取り組む米田倫康氏のものである。

過剰診断は深刻な問題

米田氏は「患者の増加に伴い、精神科クリニックの中には医療の質が低いところも増えている」と指摘します。一方で、精神科医の和田秀樹氏は「発達障がい者を社会的に排除する傾向がある現状では、過剰診断は深刻な問題である」と警告しています。

日本の精神医療の問題について、米田氏と和田氏の対談を通じて、深層を探るシリーズをお届けします。精神科の診療領域では発達障がいも重要なトピックとなっています。若い人や子供が精神科を受診する現象も増えており、発達障がいの診断が急増していることが示唆されています。

異常な状況と言える

全国的に見ても、発達障がいの診断は急増しています。例えば、長野県では毎年、唯一発達障がいと診断・判定された児童生徒の数と割合を調査しており、その割合は6.82%に達しています。

特に、自閉症スペクトラム障がい(ASD)の増加が顕著で、調査が始まった平成15年度(2003年度)の0.13%から、令和5年度(2023年度)には3.23%にまで上昇しています。これは国際的な基準で考えられる割合(0.65~1%)を大きく上回る数字であり、異常な状況と言えるでしょう。

発達障がいの診断数が増加していることは明らか

和田氏の指摘によれば、発達障がいの診断数が増加していることは明らかであり、過剰診断の可能性が高いとされています。かつては通常学級の3%程度と言われていた割合が、現在では8.8%にまで上昇しています。

また、発達障がいに対する治療の必要性についても議論があります。例えば、ADHD治療薬のコンサータを使用する必要があるほどの重度の症状を示す子供は一部にいますが、大半の子供は多少の落ち着きの欠如や他人の気持ちの理解の遅れ程度であり、それを病気とみなすべきか疑問視されています。

発達障がいであるとしても多様な経験を積むための一助になった

和田氏自身も、自身の子供時代を振り返り、他人の気持ちが理解できないクズガキであったと述べます。しかしその性格は、彼の個性であり、発達障がいであるとしても、それが彼の医師としてのキャリアや多様な経験を積むための一助になったと考えています。

和田氏は自身の家庭での経験を通じて、”正常”であることの重要性に対する母親の考え方を述べます。彼の母親は常に子供たちが個性的であることを受け入れ、一般的な道に進むことを求めず、むしろ資格取得などの個々の才能を伸ばす方向にサポートしていました。

関連記事

  • 障がいを持つ人々にも活躍の場を!日本の精神医療の現状と課題 海外の新しい科学的発見をも無視する日本の医学界

  • 国内最高齢の女性監督が映画を通して伝えたいこと「92歳、原動力は怒り。命を奪い、差別する社会は今も変わっていない」

  • 身体障害者手帳の等級一覧│視覚障がい、聴覚または平衡機能の障がい者手帳の等級による支援サービスの重要性

  • 全盲の柔道家「右手で相手を読む」土屋美奈子選手の挑戦と成長 目指すはパラリンピック・パリ大会